兄弟車を見てみる
天剣と天刀と快剣
クリスマス企画第三弾。
天剣と天刀と快剣と聞いて、一体何のことかわかる日本人はだいぶ少ない気が
するけど、こゝでは天剣の兄弟車を書いて行こうと思う。
※一部の写真については、クリックすると拡大表示するようになっている。
まずは、天刀を発売している田達二輪(TIANDA)のラインナップから、天刀の一覧を
抜き出してみた。この田達二輪は建設集団であり、同じく建設集団と関わりがある
建設ヤマハがあることから、同じ工場で作られている可能性がある。
次は、快剣を発売している重慶二輪(CQ Motor)のラインナップから、快剣の一覧を
抜き出してみた。重慶二輪も同様に建設集団である。
その親会社であると思われる重慶建設二輪のラインナップから、125cc のものを
抜き出してみた。こちらでは、YBR125 と同じエンジンを積んでいて、似たような
機種は発売されているものゝ、明らか同じという機種は発売されていない。
中国で YBR125 等を作っていると思われる重慶建設ヤマハは、重慶建設とヤマハが
資本を出して作られた会社である。この重慶建設は中国兵器装備グループにあり、
中国兵器装備グループには、いくつかの自動二輪車の会社や自動車の会社がある。
ざっと自動車と自動二輪車周りの会社を描いてみた。
中国兵器装備グループは対外的には中国南方工業グループと呼ばれていたりもする。
上記の重慶二輪と田達二輪について、会社があるような感じであるものゝ、現在は
両社や重慶建設二輪と機種を共通化していたりしているので、(brand)と記述した。
天刀、快剣それぞれをもう少し詳しく見て行こうと思う。
天刀
田達二輪では、YBR125 に相当するものを天刀R(TD125-43)という名前で、天剣の
K に相当するものを天刀K(TD125-48)という名前で発売している。また、YB125 に
相当するものは天刀Zという名前で発売している。
TD125-43 天刀R
TD125-48 天刀K

天刀R には豪華版というものがあって、ウェーブディスクやデジタルメータ、LED
ブレーキランプなどを装備している。個人的にデジタル表示という魅力よりも、
時計があるという理由でメータを替えたい。
田達から OEM を受けている UK の lexmoto では、このメータ単体で販売しており、
88.56ポンド、1万5千円ほどと高い。中国の taobao などで入手する方が安そうで
ある。
同様にKバージョンの天刀K にも豪華版が発売されている。エンジン周りやフロント
フォークなどが黒いだけでなく、さらなる装備が施されている。
天刀R の装備に加えて、リザーブタンク付きのリアサスペンションなどが追加と
なっている。
リアキャリアは欲しくないけど、全体的によい感じなので中国の通販サイトで
買うのも良いかもしれない。
快剣
一方の快剣を発売している重慶二輪(CQ Motor) でも同様に快剣Rと快剣Kが発売
されている。快剣Rは現在の YBR125 とはタンク周りが異なるが、全体的な構成は
YBR125 と同じ。天刀でも快剣でもキックペダルが付いている。
CQ125-10C 快剣R
CQ125-10C 快剣K
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快剣でも同様に豪華版が発売されていて、天刀と同様の装備があるように見える。
画像も同じものを使っていたりして、やはり製造は同じなのかなと思ってしまう。
どこかの輸入会社がどかっと輸入して欲しいところ。
天箭
コピーなのか、同じ製造なのか不明だが、FYM(飛鷹二輪)でも、「天箭(天矢)」
という機種が売られている。
FY125-18A 天箭
FY125-18A 天箭K

この飛鷹二輪は、華南二輪企業グループ(広州市番禺華南摩托企業集団)であり、
グループの web ページにはヤマハと合作していると書いてある。
広州市番禺華南摩托企業集団
 |
実際のところはコピーなのかどうなのか、扱いがわからなかった。
比べてみる
せっかくなので、天剣、天刀、快剣、天箭を並べて比較してみる。まずは、K では
ないモデルを比較してみる。手元の画像を見てわかったけど、2010年以降の YBR125
で横からの写真ってないもんだなと。仕方なく、斜めからの写真で。
そして、天剣K の比較をしてみる。
まぁ、同じだな。
コピーらしきもの
ざっくり中国の web サイトを眺めて、コピーらしきものもいくつかあったので、
それを何種類か。
・広東大福二輪
広東大福二輪では、そのまゝの名前を使った「天剣 DF125-2G 」という機種が
売られている。エンジンも車体もほゞ同じで、ディスクブレーキが左側に付いて
いたり、マフラーのヒートガードが違っていたりする。
DF125-2G
・広州市豊豪二輪車
広州市豊豪二輪車でもそのまゝの名前を使った「天剣 FH150-6 」が発売されて
いる。この会社の web ページは2015年11月ではアクセスできていたが、いつの
間にかアクセスできなくなってしまっている。ひょっとしたら倒産したのかも
しれない。
写真を見る限り、車体は YBR125 とほゞ同じで、YBR125 のエンジンをボアアップ
したものが使われているように見えるが、149cc とあるので実際は違うエンジンが
載っている可能性も高い。
FH150-6
・広州飛肯二輪
広州飛肯二輪では、「飛剣 FK125-10A 」という機種が発売されている。写真を
見ると、車体は同じようなのだがエンジンは違うようである。緒元を確認すると、
YBR125 と同じボア・ストロークの 54mm × 54mm の記述があるので、実際は同じ
という可能性もある。
FK125-10A
・銀鋼科技
銀鋼科技では、「 R8 YG125-7B 」という名前で発売されている。YBR125 との
違いは、エンジンガードが付いていることぐらい。
YG125-7B
・珠峰二輪
西蔵新珠峰二輪車では、YBR125 の姿のものを「天剣 HY150-13」という名前で、
YBR125K の姿のものを「天剣K HY150-13」という名前で発売している。原装と
あるので、オリジナルと言いたいところなんだろうけど、残念ながらオリジナル
には 150cc は存在しないんだよね。
HY150-13
HY150-13
・正好二輪
正好二輪では、「凌剣 ZH125-7C」と、「凌剣K ZH125-7C」を発売している。
凌剣K の方は、YBR125 とエンジンが異なっている。この会社は、韓国 KENOS 社の
KENOS ブランドを使って、そのまゝ名前の「Sky Sword」という名前でも発売して
いる。この KENOS のロゴがかなりグレーな色形。
凌剣
凌剣K
・三鈴二輪
三鈴二輪では、「天鑑K SL125-3K/SL150-3K」という名前で YBR125K のような
機種を発売している。エンジンが異なるのと、ホイールも6本スポークのものを
使っている。
SL125-3K/SL150-3K
こんな感じで、コピーなのかエンジンを買っているのか、OEM なのかわからない
ような機種がいくつも確認できる。web ページで確認できたもののみを挙げたが、
他にも重慶鑫源二輪車の鋒剣や、粤豪二輪の防天剣など、探せば探すだけ怪しい
感じのものが見つかっていく。
YB125SP の話
どうやら中国では YB125SP は生産中止になってしまったようである。ちゃんと
言うと、ヤマハでの発売が終了してしまった。ちょっと回りくどい言い方をした
のは、まだ作っている可能性はあるため。
YB125SP を作っていたのは建設ヤマハだが、同じ建設グループの CQ Motor では
「CQ125-8E 雷暴王」という名前で YB125SP と同じものを発売している。
CQ Motor CQ125-8E 雷暴王
CQ125-8E
また、同じく建設グループの田達(TIANDA)が「TD125-45 雷暴王」と言う名前で
発売をしている。
TIANDA TD125-45 雷暴王
TD125-45
TD125-45
昨日の記事に少し書いたが、先代の TD125-45 は「雷暴」という名前で GN125 風の
車体に中国 HONDA の CG125 と同じエンジンを登載したりしていた。同じ型式名を
使ってエンジンが違ったり車体が違ったり、混乱してしまいそうである。
TIANDA 英語版の web ページでは、RANGER という名前が付けられており、その
スペックは中国語でのページと異なり YBF139 を搭載した 137cc との記述。
TIANDA 英語ページ
SPEC
TIANDA から OEM 供給を受けて、UK にある Honley という会社が Honley HD3 と
言う名前で発売している。さらに Honley では YBR125K のようなものも売られて
いる。
Honley Motorcycles
HD3 SE
globalmarket.com にある田達(TIANDA)の海外販売ページには、この製品もあり、
ページを英語表示にすると FOSHAN NANHAI ZHONGMO SCIENCE & TECHNOLOGY CO., LTD
という名前に変わるが、この会社自体は建設グループの輸出会社らしく。その販売
ページには、真偽のほどは定かではないが「OEM FOR YAMAHA:」と書かれている。
Motorcycle 150CC CUSTOM MODEL WITH EEC(英語)
レーンジャー 150CC-YAMAHAの企業モデル(日本語)
その OEM の表示を信じる限り、YB125SP と同じものはまだ作られているようで
ある。
JIANSHE Z6
YB125SP ではなく YBR125SP はどこかで作り続けていないか調べたが、中国では
見つからなかった。似たような雰囲気を持つ重慶建設二輪(JIANSHE) の Z6 と
いう機種があった。この機種は、UK の SINNIS に OEM をしており、SC125 と
いう名前で発売されている。写真を並べてみた。
YBR125SP
Z6
SC150
何か共通の部品を使ってくれゝば助かるのだけど、見た感じエンジン以外は別の
部品を使っている。それにしても、写真撮るときぐらいはウィンカーの向きを
きちんと直せば良いのに。
この Z6 で気になる装備があった。今の SEROW 250 のように、ヘッドライト下に
バーが付いている。
Z6
LED のサブライトを付けるのに良いかもしれない。
中国の機種を眺めて
中国の機種を眺めると、未だにスズキ GN125 や GS125、ホンダ CG125 のコピーが
多く、昔流行して今も売れているのだろうなということがわかる。ある意味、
お手本としての存在であって、自動二輪車産業に新規参入するための入口のような
感じである。YBR125 もこれからそんな存在のようになっていけば、品質は別にして
部品の供給が続けられていくのではないかと思う。
現在は中国での排ガス規制が厳しくなり、自動二輪車製造の中小企業がひしめく
状況のなかで必要とされる性能を満たすエンジンの開発にお金がかかるように
なっている。規制を守られていない機種が多いという記事も見かけるが、大気
汚染の状況から締め付けも厳しくなると思われるため、中小企業は大企業から
エンジンを買うなどの対応になってきている。そうすると、価格面での優位性は
失われてくるので、だんだん淘汰されていく方向になるのではと予想する。
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