150cc エンジンの流れなど
中国で YBR150 が発売
中国で YBR150 が発売された。天剣 2.0 の名前も付けられていて、どう呼ぶべきか
また混乱しそうである。
YBR150
やはりと言うか、エンジンはボア×ストロークは 57.3mm×57.9mm で、少し前に
発売された「YS150 飛致」と同じものを搭載している。
web ページにはエンジンの写真もあるが、どう見ても左右に反転させた写真を
使っているものがあり、丁寧にも YAMAHA の文字を後から入れている辺りは、
相変わらずの中国だなと思ったりもする。
今日はこのエンジンについて考えてみる。
中国ヤマハの 150cc エンジン
YBR125 などを作っている重慶建設ヤマハ(JYM)は、1992年にできた会社である。
この会社が初めて作った機種は SR150 で、1994年に発売された。
SR150 4FP
JYM が中国で初めて製作した記念すべき機種であり、また現在も発売されている
「JYM150 致虎」のエンジンへと繋がっているものである。
この発売については、日本ヤマハの HISTORY のページや、YAMAHA NEWS で確認
することができる。
ストーリー 世界の人々に豊かな生活」を届ける市場の開発
YAMAHA NEWS July 1994 - China welcomes the SR150 and big business
2002年の YAMAHA NEWS によると、2001年の12月にフィリピンへ輸出を開始したと
記事があった。当時はフィリピンの NORKIS という会社が扱っていたようである。
また、1999年にペルーへも輸出している。
話は少し飛んで、台湾では同じエンジンを搭載した「SR150 愛将」という機種が
1992年から発売されていた。型式は 3UR で、メキシコなどにも輸出されていた。
SR150 愛将
長い間形を変えずに発売されていたが2008年に製造が中止になり、ヤマハ台湾の
ページからなくなった。スクーターだらけの台湾で、貴重な機種であった。
台北のSR150
1993年あたりに欧州へ輸出されていたとの資料があるが、どのぐらい出回ったのか
不明である。
話を中国に戻して、SR150 の後継として JYM150 が発売された。と言っても、
機種コードは 4FP のまゝで変わらず。YBR125 が発売されるまで警察向けや、
郵便向け、電力会社向けの機種が作られるなど主力となっていた。
JYM150 4FP8
この SR150~JYM150 の機種コードである 4FP の部品番号が付いた部品を、未だ
中国 YBR125 のパーツカタログに見られたりする。それだけ影響を与えた機種で
あったが、昨年発売された YS150 から新しいエンジンとなり、このまゝ終息して
いきそうである。
YS150
簡単だったけど、過去にそんなボア×ストロークが 57.0mm×57.8mm 150cc の
エンジンの流れがあった。
ブラジルと中国
2015年の暮れに中国で YBR150 が発売となった。中国では12月14日に情報が出て
いたらしいのだけど、年明けに気が付いた。この YBR150 の発売は予想外であり、
また予想内でもあった。
予想外の理由は、昨年発売していた YS150 の存在である。新しい 150cc を発売
するならもっと変えてくるかと思ったため。予想内の理由は、中国で発売される
機種はブラジルで発売している機種に続く傾向があるため。ブラジルでは2013年
8月に FAZER 150 を発売し、2015年10月に FACTOR 150 を発売した。それと同じ
ように、中国で YS150 を発売してから YBR150 を発売したという流れになったと
すると、予想できないものではなった。
この中国の YS150 と YBR150、ブラジルの FAZER 150 と FACTOR 150 の車体を
比較してみる。
中国 YS150 飛致 | 中国 YBR150 |
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ブラジル FAZER 150 | ブラジル FACTOR 150 |
マフラーの差異やセンタースタンドの有無などあるが、ほゞ同じ構成である。
中国の YS150 には、FAZER のステッカーさえもある。
YS150
日本やヨーロッパでは 125cc という排気量に大きな意味があるが、意味がない
国にとって 125cc は数字の目安に過ぎない。ブラジルや中国では 125cc には
意味がないので、排ガス規制が厳しくなってきた現在は、150cc 化が進んで行く
ことが考えられる。
このエンジンの 125cc 版
こゝまで書いたことは、昨年10月に少し書いていたことである。そして、この
新しいエンジンの 125cc 版としてインドの Saluto / Saluto Disk Brake が出て
いたことも書いた。このエンジンはリッター78kmも走るとある。
Saluto
その10月に、この 125cc 版エンジンを搭載する機種が1つ増えた。正確に言うと
発売されてはいないのだけど。その機種は Resonator 125 である。
Resonator 125
東京モーターショーで発表された Resonator 125 には、ブラジルの FAZEER や
インドの FZ と同じストロークが 57.9mm のエンジンが搭載されている。YBR150
でも見られるようなエンジン左側ヘッドサイドカバーの盾形が特徴的。
Resonator エンジン
TW125 発売終了後、ヤマハ空冷 125cc エンジンは YBR125 系のみとなったが、
この YBR150 系のエンジンのボアダウン版の登場で状況が変わってきている。
ホンダの HET、スズキの SEP に対抗して、ヤマハが最近推している BLUE CORE
というものがある。YBR125 系のエンジンで、BLUE CORE のものはないが、この
新しいエンジンは BLUE CORE のものが発売されており、これからも増えそうな
感じである。
次はブラジルでこの 125cc 版エンジン搭載の機種が発売されそうな気がする、
と根拠のない予想をして。
同系エンジン
この YBR150 に搭載された系統のエンジンについて、いつ頃から使われている
のか調べてみた。簡単に調べた感じ、2008年9月にインドで FZ16(型式21C) へ
搭載されたのが始まりのようである。
FZ16 2008
この FZ16 は昨年頃から FZ と呼ばれるようになった。現在のインドのライン
ナップを見てみると、同系エンジンの機種は。
FAZER-FI
FAZER
FZS-FI
FZS
FZ-FI
FZ
SZ-RR VER 2.0
SALUTO DISK BRAKE
SALUTO
と、かなりの種類である。
せっかくなので、同系エンジンを搭載した機種の一覧を。まずはインドから、
FZ 系列の一覧。横に並んでいるのは機種というよりも、バリエーションの感じ
だけど。この6つの機種は、東南アジアや中南米でも発売されている。
FZ | FZS | FAZER |
| | |
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FZ-FI | FZS-FI | FAZER-FI |
続けて、SZ 系列と SALUTO 系列を。SZ-S は昨年で発売中止になってしまった
ようである。この SZ系列は、SZ, SZ-R, SZ-X, SZ-S, SZ-RR, SZ-RR VER 2.0 と
次々名前を変えて進化している。RR なんて名前だけど、チェーンケースは付いて
いるまゝ。
SZ-RR VER 2.0 | SZ-S |
| |
| |
SALUTO | SALUTO DISK BRAKE |
そして、インドネシアから BYSON が出ている。これは FZ の名前違いと呼んでも
良いぐらいのものである。ついでに、ブラジルの CROSSER 150 も。
BYSON | CROSSER 150 |
| |
あとは、上記にあるブラジルの FAZER 150, FACTOR 150、中国の YS150, YBR150
が出ている。
エンジンを比べてみる
一部を除くこのエンジンには、プラグの前に黒いエアスクープのようなものが
付いている。そこには Y.R.C.S. と書かれており YAMAHA Ram-Air Cooling System
の略のようである。プラグ周りの冷却に使われていて、その昔カワサキの ZXR
なんかに付いていた K-CAS を思い出す。
YRCS
と言っても単なるエアスクープで、エキパイの影響を直接受けているのもあり、
名前を付けてまでの冷却効果があるのかは疑問である。
YRCS
中国の YS150 や YBR150 にも付いており、ブラジルの FACTOR には付いてないが
取り付け用のネジ穴は存在している。
そんな比較もできるように、いくつかのエンジンの写真を一覧で。
Resonator 125 | Crosser 150(ブラジル) | Factor 150(ブラジル) |
| | |
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SALUTO(インド) | FZ-S FI(インド) | FZ(インド) |
手元に良くわからない FZ16 の写真があって、メモによると5年前に入手したものゝ
ようなのだけど、それ以外のことは書き忘れていたのか、あえて書いてなかったのか
覚えてないもの。この FZ16 は、YRCS が装着されていない。インド製のエンジン
のように見えるが、詳細不明である。
FZ16 |
|
インド、ブラジル、中国、インドネシアでの緒元を一覧にしてみた。馬力表示か
kW 表示かどちらにしようか悩んだが、世界の流れは kW のようなので、馬力しか
表示がない機種については kW に変換し、小数点2位で四捨五入した。
SALUTO だけ4速のギアを採用している。同じ機種でもアジア各国や中南米向け
モデルでは馬力が微妙に違ってくる。
ついでに水冷エンジン
150cc/125cc のもう1つの柱、水冷エンジンについても、メモ代わりに書いて
おく。この水冷エンジンは、上記空冷エンジンとレイアウトが似ている。部品を
比較してみると、空冷エンジンとの共通部品は無いに等しかった。
水冷エンジン
YZF-R125, YZF-R15 などの YZF 系や、MT-125 の MT 系、さらに WR125X/WR125R
の WR 系などに搭載されている。欧州以外ではマレーシアの FAZER150i などの
ように 150cc で使われることが多い。
YZF-R125
この水冷エンジンはだいぶ前に傾けても大丈夫なように設計されているようで、
アンダーボーン車に近い形のインドネシアの JUPITER MX 150/MX KING 150 や、
マレーシアの Y15ZR、タイやベトナムの EXCITER 150 などでは、かなり前傾の
状態で装着されている。
登載されている感じを一覧で。
MT-125(EU) | WR125R(EU) | M-SLAZ(タイ) |
| | |
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FZ150i(マレーシア) | EXCITER 150(ベトナム) | V-IXION(インドネシア) |
発売国が多いので、適当に選んだ機種・国での諸元を。150cc 版は 125cc 版より
0.1mm ストロークアップしている。
EU |
YZF-R125 | 124.7cc | 52.0mm x 58.6mm | 11.0 kW/9000rpm | 6速 |
MT-125 | 124.7cc | 52.0mm x 58.6mm | 11.0 kW/9000rpm | 6速 |
WR125R/WR125X | 124.7cc | 52.0mm x 58.6mm | 11.0 kW/9000rpm | 6速 |
マレーシア |
FZ150i | 149.8cc | 57.0mm x 58.7mm | 12.2kW/8500rpm | 5速 |
Y15ZR | 149.8cc | 57.0mm x 58.7mm | 11.3kW/8500rpm | 5速 |
インドネシア |
V-IXION | 149cc | 57.0mm x 58.7mm | 12.2kW/8500rpm | 5速 |
MX KING 150 | 149cc | 57.0mm x 58.7mm | 11.3kW/8500rpm | 5速 |
インド |
YZF-R15s | 149cc | 57.0mm x 58.7mm | 12.2kW/8500rpm | 6速 |
タイ |
M-SLAZ | 149cc | 57.0mm x 58.7mm | 12.2kW/8500rpm | 6速 |
EXCITER 150 | 149cc | 57.0mm x 58.7mm | 11.3kW/8500rpm | 5速 |
フィリピン |
SNIPER 150 MXi | 149cc | 57.0mm x 58.7mm | 11.3kW/8500rpm | 5速 |
タイで M-SLAZ が発売されたのもあり、ヨシムラのマフラーなどアフターパーツが
豊富に発売されている。
これからの流れを予想しながら
少し取り留めもなく書いたが、そんな海外のヤマハの状況を見ながら、これから
どんな機種が発売されるかといった予想をするのも、良いお酒の供である。次は
Crosser 150 の中国版が出てくるかなと考えながら春の到来を待ちつゝ。
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